北枕ふか子のブログ

行ったりやったりつくったり

それで、五〇音展どうだったの?

電車の中でぼーっとしながらダウトのモテドポイント貯めてたら「日常が戻ってきた」と気づきました。紛れもない日常!!戻ってきた!ただいま!!おかえり!!

 

はい。

 

五〇音展という2日間だけの体験型展示をチームNASという3人組でやりました。

根津にあるHOTEL GRAPHY NEZUというホテルの畳ルームで、ひらがなをテーマに。

なんというか、じっくり貯めておいて、展示内容とともに振り返りたかったんですが、考えたことだけ先に記しておきます。わたしの感想と、なぜ五〇音展をやることになったかの経緯です。すぐに更新しようと思ったのに、なんだかんだ木曜日になってしまった…。

 

◯展示をやる、ということ

 

まず、なぜこの展示をやることになったか…それは、「なんでもいいからNASで空間展示がやりたかったから」。

ただ、「展示やります!来てください!」というのはやりたくなかった。自己満足で終わる展示はやる意味がないなと思ってたんです。

そこで見つけたのが、文芸フェスのオリジナルイベント募集。文芸フェスがなんだかもよくわかってなかったのですが、とりあえず、NASの2人に「これ、応募しない?」と聞いたら二つ返事で「しよう」「やろうか」と返ってきたのがすべてのはじまりです。

 

NASには、何ができる?

 

「やろう」。じゃあ、何を、どこでやるのか? 

文芸フェスでは小説家や文学に関わる人がトークイベントをやったり、読書会をやったり…というイベントがほとんどで、最初は「大学の先生にお願いして読書会をやろうか」という話もでたのですが、「それってNASがやること?」

NASができることってなんだろう?何がしたいんだろう?何が得意なんだろう?と考えていくうちに、「いままでやってきた体験型展示を、文芸をテーマにやろう」という話になりました。

 

◯なにを「体験」させるか

 

3人とも働いてるし、土日も予定があるから3人で会えない。だから2人にずつ会って、打ち合わせて、それをまとめる、という流れで企画内容を決めていきました。

最初にせいじと会って、ターゲットと場所と目的を決めて、そのあとにあおきさんに会って、やりたいこと・できそうなことを絞りました。そこで残ったキーワードが「五〇音」。

文芸だとか、文学だとか、小説だとか、難しいことはわかんないけど、それらを因数分解して、楽しんでもらえたら、もっと文芸、文学に触れてもらえるんじゃないか?

 

それが、五〇音展のはじまりです。

 

◯まさかの採用で動揺

 

とにかく出せればいい!と思って、企画書を提出。すると、「オリジナルイベントで採用したいので面談に来て欲しいのですが」と連絡があり、「まじか」と動揺。

緊張しながら面談で「こういう展示がしたい」と話すと「楽しそうじゃないですか~!ぜひお願いします!」と言われてまたもや動揺。マジっすか!いいんすか!?

他のオリジナルイベントの内容を聞くと真面目なものばかり。「わたしたち、これ出ていいのか…」というのが率直な気持ちでした。

 

◯やるぜ!チームNAS!

 

そこからは週一くらいで会って企画内容の擦り合わせ。お互いいろんなものを作ってきて、見せ合って、「いいね!」というのをやっていました。

ただ、時間が足りない!!!!

話し合いも、制作もうまくできず、各コンテンツを各々に丸投げて、それぞれがやる!という形で進んでいったので、お互いどんなものをやっているかが逐一チェックできないもどかしさがありました。LINEとかで報告しあっていたけど、実物を見て話し合えないというもどかしさ…。 

もちろん、持っていけるもの(触る文字だとかおみくじの木)はお互いに見て「これはこうしたほうがいいね」と言っていましたが、やっぱり全部が全部チェックできるわけじゃない。3人がお互いに信用して、前日準備を迎えたわけです。

 

◯22時から準備開始。焦らない不安

 

前日準備で全員が集合したのは22時。手伝いは2人(本当にありがとう)。合計5人で準備を開始します。

各々が作ってきたものを並べるだけなので準備は簡単。3時間後の深夜1時には大体の配置も済み、朝に少し手を加えれば人に見せられる程度になっていたのです。

 

◯「いい展示だ(でも、なんか違うぞ?)」

 

1日目の朝、残りの準備をして、11時に開始。知り合いがちらほらとやってきて、あっという間にお昼頃に。

この展示がいいのか悪いのか不安でしたが、知り合いたちは「すごいねー」と褒めてくれるので、「きっといいんだろうな」という気持ちがありました。

でも、夕方ころに自分で回ってみると、面白いんだけれども、まだまだ詰めの甘いところが多数あり、「この展示、まだまだ伸びしろあるぞ…」ともやもや。その伸びしろが何かわからず、NASの中でもうまくすりあわせができず、もやもやしながら帰宅。

家に帰ると(その日展示に来てくれた)姉が起きていたので、「展示、どうだった?」と聞くと、一つひとつ丁寧に感想を言ってくれました。これはこうしたほうがいい、あれはもっと全面に出したほうがいい、と。それをうけて、「あ、あのもやもやはそういうことか」と気付かされたのです。

 

◯配置を変えたら、ぐんと良い雰囲気に

 

その夜のうちに、2人に姉の感想を伝えて、こうしたほうがいいんでは?という提案をしました。翌朝、入り口付近に「触る文字」を置いて、靴を脱がなくても触れるようにし、ハマる人・ハマらない人が分かれる「文字ふくわらい」は入り口右に。わざわざわたしたちが解説しないと伝わらないというのは”失敗”ということだから、知り合いが来ても極力説明せずに、「こっちから回ってね」くらいで各々が楽しんでもらう形に。

そうしたら、NAS側が説明しなくてよい分、ワークショップやその他の展示の準備や管理に時間を割く事ができたし、来場者が自分の好きなように展示を楽しめるようになった。話し声も極力小さくして、知り合いが来てもきゃーきゃー言わないようにして、居心地のいい環境にした。

ビルエヴァンスが流れる空間で各々が展示を楽しむ様子を見ながら「これこれ!これを求めていたんだよ!」と感じました。

 

◯ありがとう!文芸フェス!

 

1日目の夕方に、文芸フェスの学生ボランティアの方が取材に来てくれて、「明日までなので、今日中に記事をアップできますか…?」と無茶振りを言うと、笑顔で応えてくれて、なんと、取材の1時間後に(!)facebookに記事をアップしてくれたのです!(NASは感激して「日本の未来は安泰だ…」と言いながら泣きました)

そうしたら、2日目、「文芸フェスのfacebookの記事でみた」という人がちらほら来てくれたのです。それがすごく嬉しかった。

facebookで見た」と言ってわざわざ来てくれたからといって、面白くなかったらすぐ帰ってしまう。

でも、みんな、ちゃんと文字を触って、遊んで、考えて、占って、つくっていってくれた。それが、めっっちゃくちゃに嬉しくて、「この、全然知らない人が楽しんでくれるのが、NASの展示をやっていて一番嬉しい瞬間だなあ」と思いました。

 

◯「またやってよ」

 

そして、嬉しかったのが、「こういう展示、よくやってるんですか?」「2日じゃもったいないです。またやってください」と声をかけられたこと。もう、嬉しくて、どうしようかと思いました。嬉しすぎて、またできるように、全部のパネルをキレイにもって帰ってきちゃった。 

なんというか、芸術祭のときは「終わったー!もうやらないんだろうなー大学生活楽しかったなー切ないなー!」という気持ちでいっぱいだったのに、今回は、「またできるんだよなーそしたらあそこは改善したいし、もう少しこうしたいなーこういうのいれたら楽しそうだなー」と思っている自分がいる。冷静に。それが、なんというか、嬉しい。まあ、またやるかどうかは、わかんないですけど。

 

◯なぜ「NAS」なのか

 

よく、「なんでNASなの?」と聞かれます。「なかはら、あおき、すずきの頭文字を取ってNAS」っていう話ではなくて、「なぜ、なかはら、あおき、すずきの3人なのか」という話です。

確かにこの3人は趣味も好きなものも仕事もバラバラで、共通の話題で盛り上がることが殆どありません。ある意味すごいことです。びっくりします。

それでもなぜこの3人なのか。

他の2人がどう思っているかは知りませんが、わたしは2人の感性が自分には絶対にないもので、それが絶対的に面白いものだと信頼できるから、だと思っています。

例えば、音に名前をつけたり、楽しいことを考えたりするのはあおきさんが一番上手。せいじくんは粋な文章を書いたり、センスのあるものをつくるのが一番上手。だから、わたしに足りない部分は2人に補ってもらいます。

3人それぞれ、やりたいと思うことも違います。ざっくりとジャンルわけをすると、わたしは「読む」、あおきさんは「触る」、せいじくんは「見る」。その3つが、1つになることで面白いものになる。

だから、展示の打ち合わせを3人でやっていると、「全然考えつかなかったわー」というアイデアが2人からどんどん出てきて、どんどん面白くなっていく。それが、すごく楽しいんです。だから、この3人なんだと思います。

 

◯なぜ根津にしたのか

展示場所を根津のホテルにしたのは、「畳がある場所でやりたかったから」という理由だけです。でも、下見に行ったときに、この場所に一目惚れして、こんな素敵なところで展示ができたら楽しいだろうな、と思ったの覚えてます。根津駅からわかりにくいけど、猫道を通って行くのも「根津らしい!」って感じがしません?

それに、HOTEL GRAPHY NEZUのスタッフの方々は本当に良い人ばかり。本当に、感謝してもしきれません。甘酒を出すことになったのも、スタッフの方からオリジナルメニューについてご提案いただいたものだし、準備も遅い時間まで許してくださったり、「面白い展示やってるよー」と言いながら常連さんを連れてきてくださったり、本当にいいホテルです。上野や根津付近に宿泊の際は是非!! 

もう一点、このホテルでこの展示をできてよかったなあと思ったのが、スタッフ全員英語ベラベラだってこと。それは、外国の方が来たときに訳してくれて助かる!ってことじゃなくて、トリリンガルや外国人のスタッフが多いから、「なんで日本語って50音なんでしょうね」みたいに“世界からみた日本語”として見てもらえるのが嬉しかったんです。その視点がもらえるのも、嬉しかった。

◯最後に…

まあ、なんやかんやと長くなってしまいましたが、いやはや、楽しかったです。五〇音展。

こんなにたくさんの人が来てくれるとは思ってませんでした。文芸フェス、応募してよかった。

何より、多くのみなさんにお越しいただけて嬉しかったし、なおかつ、その人たちが文字を触って、感じて、書いて、聴いて、占って、作っていってくれたのが嬉しかった。

またやるかどうかは、わかりませんが、わたしが2人に「やろう」って言えば、2人が「いいよ」「やろうか」って言ってくれるんだろうなと勝手に思ってます。でも、そんなに頻繁にはできないし、何があるかわからないから、「またやりまーす!よろしくー!いえーい!」とは大声では言えないです。こっそり、またやりたいなーとは言っておきますが。

また、なにかやるときはどうか、どうかあたたかく見守りつつ、できれば実際に展示に足を運んで、楽しんでもらえれば嬉しいです。

 

2日間、ありがとうございました。

 

ちなみに、ありがとう、って言葉は「こんなにうれしいことは滅多にないことだ」→「滅多にないから、有ることが難しい」→「有り難し」→「ありがとう」という感じでできたんだそうです。

こんな風に嬉しいことは滅多にないよ。ありがたいよ。

本当に、ありがとうございました。