北枕ふか子の枕営業日記

行ったりやったりつくったり

運命の人

「もしな、めっちゃ好きなタイプの人が歩いてきたら、なかはら、どうする?」
と、バイト先の社員さんに聞かれた。

実際、めっちゃタイプの人が歩いてくるなんてことはないのだけれど、
もしあったらどうしよう?
そんなことばかりをここ2、3日考えている。
考えすぎて夜も眠れない。歯も磨けない。逆立ちもできない。
もうダメだ、生活できない。

そもそも、めっちゃタイプの人って?
それは”運命の人”というやつか?
運命の人に出会ってしまったらどうするんだ?

私がもし運命の人に会ったとしたら、
4つの選択肢が浮かぶだろう。

1・素早く携帯を取り出し、写真におさめる
2・なんでもいいから声をかける
3・ストーキングする
4・ドラマ風に見つめて、振り返ってみる

こんなところだ。
しかし、素早く携帯を取り出せたとしても、カメラ機能がひらいたときには
もうあの人はいなくなっている可能性が高いし、
カメラ機能がすごい早さでひらいたとしても、音で気付かれてしまう。
「は?アイツ何俺のこと撮ってんの?マジきもい」
とか思われてしまう。
だめだ、運命の人に嫌われた。この世の終わりだ。生きていけない。

なんでもいいから声をかけるというのも難しい。

「あの、」
「?」
「運命の人ですか?」
「!」

新興宗教の勧誘みたいだ。
あの人はきっと私のことを頭のてっぺんからつま先まで見た後に
鳥肌を立ててダッシュで私の前から逃げ去るのだろう。
家に帰ってトイレでひとしきり嘔吐したあとに
Twitterに「さっき宗教勧誘されたwwwマジきもいwww」と書き込むだろう。
運命の人に不信感をもたれた。恥ずかしい。生きていけない。

ストーキングは警察沙汰になって本気で生きていけなくなるから無理。
世間的に生きていけない。運命の人にそこまでする義理ない。

ドラマ風に見つめて振り返るのは、きっと自分の中では素敵な思い出になるだろうが、
あの人は99%気付いてくれない。
ここであの人も振り返ればマジで"運命の人"なのだが、
振り返った先にいるのが私ではなんだか申し訳ない。
もっと美人にならないといけないな…ちょっと整形外科行ってきますね。

いろいろと悩んだのだけれど、
バイト先の社員がいろんな若人に質問した結果、
「あらかじめ連絡先を書いた紙を持っておいて、
それをその子に渡す」
が一番良い方法だそうだ。

なんだそれ!チャラいな!

きっとあれだ。

すれ違う
(運命の人だ…!)
ポケットから連絡先を出す
「あの…」
「はい?」(振り向く彼女)
「俺、あの、タイプだったんで、つい(照)」
「え(照)」
「これ、俺の連絡先なんで、あの、じゃあ、また(ぎこちない微笑み)」

なんだこれかっこいいな!うぜえわ!
連絡しちゃうかもしんねーだろ!
なんかよくわかんないけど、嬉しいだろ!
怖いけど嬉しいだろ!
Twitterとかフォローしちゃうだろ!
そこから始まるラブストーリーだろ!

ひっそりと「運命の人ですか?」と聞くと宗教っぽいけど、
照れながら「タイプだったんで、つい」とか言うとチャラい。
かっこいいけど、チャラい。いやだ。チャラいのいやだ。
もっとロマンチックな言葉はないのか。

「一目惚れしました」

ちがう、ロマンが足りない。


「こんにちは」

<知り合いかも?>


「いまアンケートをおこなっていまして、少しだけお時間いただけませんか?」

嘘はよくないなあ



「どこ住んでるんですか?」

犯罪だわ


「君さあ、俺のこと好きだったりするー?」

きもい


「髪きれいだね。シャンプー何使ってるの?」



「おはよう!」

おはよう!



「ちょっとお茶とかどうっすか?」

チャラい


「可愛いっすね」

チャラい


どうしたらいいんだ。私は運命の人に会ったときどうすればいいんだ。

そもそも運命の人ってなんだ。
多分、「この人だ」と思うんだ。心の底から。
理屈抜きで、「この人だ」と直感で思うんだ。
ロマンチックなことだ。すごく。この上なく。

じゃあ、「あなたが運命の人だ」と言ったらいいのか。
いや、でも「運命の人」という単語を使うときっとあの人は宗教だと勘違いしてしまう。
運命の人はぬかそう。

「あなたが、そうだ」
警察かよ!犯人かよ!サスペンスかよ!
アリバイ工作ばれちゃったー!あーあ!


もう少し、なんだ、ないのか。
「あなた」がよくないのかな。
「お前が」だと偉そうだし、
「そなたが」だと江戸っぽいな。
「きみが」お!いいんじゃない!君が!

「君が、そうか」
これだと刑事さんが犯人の自白を聞いたときの反応みたいだよ…
もう火曜サスペンス劇場はおなかいっぱいだよ…

「そうか」だとダメなのか
「君が、そうなのか」サスペンスだ
「君が、そうなの」可愛いな
「君が、そうだった」名前思い出したのか
「君が、そうだったのか」お!いいんじゃない!そうだったのか!これだったのか!

じゃあ運命の人と出会ったら、
その人の前に立ち止まって

「君が、そうだったのか」

と言えばいいのだ。
きっと相手は

「ええ。やっと会えたね」

と微笑んでくれるに違いない!
絶対そうだ!



……いやいや、無理だわ!

「は?誰?」って言われるわ!
あーもう嫌だ!運命の人とか無理!
私の脳内じゃ処理しきれない!運命の人連れて来て!
運命の人ってそもそもなんだよ!出会っても仲良くなれねえよ!

幻想が一番素敵だよ!ばかやろう!
夢は叶ったらただの夢か!そうか!そうなのか!残酷だな!
運命の人に出会っても心の中でそっと想っておくのが素敵だよ!


結果:運命の人には、出会ってはいけない。


(次週は「運命の人に出会うなら」
「<久しぶり>への美しい対応」
「後悔しない後悔の仕方」です!
お楽しみに~☆)